体験者からのメッセージ

「まちくさ」に参加し、何やら幸せ〜な気分になったことは今でもよく覚えている。あれは何だったのだろう?目の前にはいつもの街の雑踏が広がっているだけ。海や山や森といった特別な光景が広がっているわけではない。自転車が無造作に並んでいたり、錆びた鉄柵が続いていたり。
ところが「まちくさ」という、まるで呪文のようなフレーズと課題を口の中でブツブツ唱えながらよおく目を凝らしてゆくと、・・あら不思議、目の前に次第に鬱蒼としたジャングルや、遠くに竜巻が移動する広大な草原まで浮かび上がってくるではないか?
おやおや、これはなんとしたことか!まるで詩人になったような自分が嬉しくて、夢中になってそれを書き留める。フン、フン〜とちょっと有名写真家になった気分すらする。
そしてこのあと、「どうだあ」と自分だけの世界を発表する時のあの高揚感にも似た気分・・これら全てが、創作者の幸せであり、それへの旅の道筋は重本くんという、まさに「まちくさ博士」であり冒険家が、この現代の小さな街角の中に見つけた偉大な発見なのである。

中崎宣弘(空間構想デザイナー、絵師)

「まちくさ」という名前が良い。ひらがなの字面と「道草」にも通じる語感とが相まって、関わる人をホッとさせる風情がある。
しかし「まちくさ」はその和みの中に、都市と人の生を抉るエッジィさを隠している。土とアスファルトの間、ビルとビルのすき間に根づきながら自生する「まちくさ」たち。彼彼女らをみつけ、名づけ、物語に思いをはせるとき。私たちは「まちくさ」に自らの似姿をみる。集まりながら隣近所の人たちの顔も知らず、時に自分自身すら見失ってしまうかに思われる都市の生活において「まちくさ」とは、自分たち自身を快復させ、それらをつなげて、都市に〈もう一つの〉生態系をつくりだす。そんなひそやかな革命ともいえる行為なのだ…と、思う。

奥脇嵩大(青森県立美術館 学芸員)
でかすぎたモップ
投稿されたまちくさを紹介