まちくさの魔法で 見慣れた「まち」の景色を塗り替えていく
ある日、道を歩いていると、ふと道端のヒビ割れの隙間から顔を出している草に目が止まりました。
それは、いつもの見慣れた何気ない風景の一つでした。ただ、わずかな隙間からこっそりと生え出ている、その草のけなげな姿に何かを語りかけられているような感覚を覚え、それからの日々「まち」の中に生えている草の姿を観察するようになりました。
「まち」の隙間を縫うようにして生える草の独特の生え方や、生えている場所の特徴に視点を向けると、それぞれが個性的で豊かな表情をもっていることに気づきます。
一つ一つの単体としての草ではなく、まちの構造物と身を寄せ合う集団(かたまり)としての草の姿かたちを見ていると、人とどこか似通った儚さや可笑しみ(ユーモア)といった趣さえも感じ取ることができます。
私は「まち」と「くさ」が寄り添い、関係し合う姿を「まちくさ」という言葉で表現するとともに、まちくさの姿を写真に記録し、それぞれの特徴ごとに自分なりの自由な発想で「命名」や「物語」をつけていくことにしました。
まちくさとは、見慣れたまちの風景を視点を少しだけずらして眺めることで、誰もが持っているワクワクするような想像 ( 創造 )力を掻き立て、目の前に全く違った世界を描き出す「魔法」のようなものなのかもしれません。
まちくさ博士 重本 晋平
考案者
しげもと しんぺい
重本 晋平 (まちくさ博士)
2007年に「まち」とそこに生える「くさ」をひとつの風景として見立て、そこへ独自の命名や分類をする「まちくさ」を考案。図鑑と絵本を自主制作。
また、同時期より路上探検「まちくさワークショップ」を開始。